地球 
佳奈子のチャイナ紀行
石田佳奈子さん略歴
 1977年室蘭生まれ。室蘭清水丘高等学校卒業後、市外の大学へ進学。夫の海外赴任に伴い、2005年7月から中国蘇州市在住。両親が室蘭在住。

 (3) 日中の歴史を垣間見る 平成20年3月9日付朝刊「文化欄」掲載

ハルピン郊外で行われた「氷祭り」。夢のような世界が広がった
ハルピン郊外で行われた「氷祭り」。夢のような世界が広がった
 ばばば〜ん! 至るところで、爆竹や花火がすさまじく鳴り響く。今年も春節―中国のお正月がやってきたのだ。大晦日は、1年の店じまいをする商店が何連にも連なった爆竹をいっせいに鳴らすものだから、その迫力には息を呑まされる。
 この春節休み、私は中国東北部、瀋陽・長春・ハルピンを回る旅行に出た。厳しい気候と大自然、また、満州族・朝鮮族・モンゴル族などの少数民族の歴史や文化が融け合った、独特な魅力ある地。そして、ここ東北地方いわゆる旧「満州」の地は、過去に重い歴史的事実があった地である。
 遼寧省瀋陽に到着。近代的な街を走りながら、数年前の「瀋陽日本領事館」の事件を思い出し、北朝鮮の国境近くにいることを実感。そうしているうちに、清時代に作られた世界遺産、瀋陽故宮に到着。北京の故宮博物館の12分の1といわれるその敷地はそれでも6万平方メートルあり、歴史映画に出てきそうないかにも中国らしい建築物を見学していると、ゆうに1時間は費やす。その後、旧大和ホテルや旧満州鉄道を見学し、この日の行程を終える。
 翌2日目、ポプラや柳の木に囲まれた北国情緒溢れる街、吉林省長春へ。1932年、日本は「満州国」を建国、長春はその首都「新京」とされた。今でも高層ビルの間に「満州国」時代の建物が多く残る。夜は氷の張った路面がイルミネーションを照らし、イルミネーションがキラキラ輝く樹氷を照らして、とても美しい。
 翌3日目、日満議定書も調印され、ラストエンペラー宣統帝が居住した仮の皇居「偽満皇宮」と「映画製作所」を見学。行程を終え長春を離れる前、ガイドさんがこう話した。「昔ここ長春では日本と中国が戦争をしていて、多くの人が亡くなりました。戦争後は、親を失った日本の子供たちがたくさんいて、彼らはいつも泣いていました。私のおばあさんもそういう日本の子供をたくさん見たし、近所に日本人の子供を引き取って育てていて、日本人の子供を育てているという理由で、指導者に意地悪される人もいました。でもおばあさんは言いました。戦争で悪いのは指導者だ。日本の普通の人たちも中国人と同じ被害者なんだよ。だから、日本人にもやさしくしないとだめだよ。」
 その後、私たちはハルピンへ。平坦な路の端には、民家と広大な麦畑が広がっている。民家はどれも平屋で何本もの煙突が突き出ており、これも極寒をしのぐためのハルピン地方の特徴だろう。市内に入ると、帝政ロシアによっておよそ100年前に建てられたドーム屋根のロシア建築が、エキゾチックな雰囲気を漂わせていた。
 翌4日目、私達はハルピン郊外のスキー場へ。途中路は塞がれ予定外のロスがあるも、何とか無事到着。貸し出されたスキーに、目を見張った。なんとそれら貸し出し用のスキー板には「〇〇小学校〇年〇〇組」と記されていたからだ。それらは全て、日本からの寄贈のようである。ウエアも何年か前、日本で流行っていたもの。なんだか面白かった。数年ぶりのスキーを楽しんだ後は、ロシア料理の晩餐。しかし大皿にのったボルシチを中華風に小皿に取り分けられたときは、少々落胆してしまった。そして、いよいよ夜の「氷祭り」へ。そこには、いくつもの巨大な氷像が色とりどりの光線を発し絡み合っている、夢見るような世界が広がっていた。つい童心にかえって、はしゃいで氷の滑り台に駆け出してしまいたくなるような。
 翌最終日、「東北虎林園」、そしてハルピンのシンボルとも言える「聖ソフィア教会」などを見学し、私達は帰路へ着いた。江南の水の都、蘇州へ。



 (2) 格別な“旅の味”白酒に酔う 平成20年1月13日付朝刊「文化欄」掲載

日本でも話題の幻想的な泉の九寨溝・黄龍
日本でも話題の幻想的な泉の九寨溝・黄龍
日本でも話題の幻想的な泉の九寨溝・黄龍
 10月1日、中国は国慶節(建国記念日)を迎え、1週間程の大型連休となる。この機会を利用して私達は中国人ツアーに混ざり、日本でも話題の九寨溝・黄龍へ向かった。
 旅行1日目は、旅の起点となる「三国志」でおなじみの成都へ移動。
 2日目、九寨・黄龍空港で中国人ツアーと合流、まずはバスで黄龍へ向かう。黄龍の名は、上から見ると黄色い龍のように見えるから、そう呼ばれるようになったとのこと。車中、ガイドの中国語の説明は聞き取れないこともあるが、窓からは四方を山に囲まれた広大な大地が見える。バスを降りると、山麓の五彩池まで片道4キロ、往復4時間の山登りの開始である。実は私、ここで少々面食らってしまった。というのも、「九寨溝・黄龍は美しい水景色の世界遺産」というイメージが自分の中で先行し、多少歩くにせよ、こんなにハードな山登りが待っているとは思わなかったからだ。楽して美しい自然を見られると思っていたら大きな間違いであり、登るしかない。しかし、やはり期待を裏切らない素晴らしい景観が待っていた。紅葉した木々と、前面には岷山(びんざん)山脈の主峰の雪化粧が施された「雪峰頂(標高5588メートル)」を望み、横には石灰石に侵食されてできた丸い囲いに澄んだエメラルドグリーンの水が溜まった池が、段々畑のように続き、溢れ出した池の水が上から下へと途切れることなく流れている。ところどころ水しぶきをあげる光景に、心もスッとする。今まで見たことのない光景に感激し、下山した時には空も暗くなりかけていた。
 翌3日目は九寨溝見学。九寨溝は岷山山脈の北部を深くえぐる峡谷で、一帯に9つのチベット族の集落があることが、その名の由来になっているそうである。ここではバスを乗り降りしながら、終日ハイキングする。九寨溝はY字型になっていて、一番奥の長海から谷に沿って大小無数の池が点在している。その青く澄んだ水はとても神秘的で、見ている私達は自然と目が細んでしまう。一方で、ところどころ見える滝の規模には圧倒され、今度は目を見開かされる。「水」のもつ不思議な魅力に目をパチクリさせていたところ、今度は耳が反応した。何やら、清掃にあたっていたチベット族の初老の男性が、禁煙の遊歩道を、喫煙しながら歩いている漢族の男性にものすごい剣幕で怒っているのだ。笑いながらあしらっているこの漢族に対し、チベット族は尚も怒り続けている。しかし、漢族の方も周りの人たちの興味の的となり、面子を守るためかなかなか煙草をやめようとしない。古くからここに住むチベット族が、この自然を愛し守り続けてきたんだなぁということを実感する場面であった。私達もこのことを忘れずに、見せてもらうからにはここの自然を守っていこうという心がけが必要である。
 夜は、ホテル近くの屋台やおみやげ物屋さんをふらふら見て歩く。伝統ある酸味の利いたビールのような白酒とヤクの串焼きという、地域ならではの「旅の味」もまた格別である。
 翌4日目、私達は帰途に着いた。幻想的な泉の九寨溝・黄龍から、近代化が進む水の都、蘇州へ。



 (1) のんべい夫婦と青島国際ビール祭 平成18年9月10日付朝刊「文化欄」掲載

巨大なステージと大量の席。規模が違う青島国際ビール祭
巨大なステージと大量の席。規模が違う青島国際ビール祭
 「青島ビール」という銘柄を聞いたことがあるだろうか。恐らく中国を旅行したことのある方はもちろん、日本でも中華料理店などで口にした方も多いであろう、中国青島市で製造されている、世界的にも有名なビールである。私がここ蘇州に住んで1年あまり、すっかりこの「青島ビール」のお世話になっている。とにかく美味しいのだ。日本円で1瓶60円のビールを片手に、主人と晩酌するのが一日のささやかな楽しみとなっているが、とうとうこの夏休み、その青島を旅行した。のんべえの私たちの目的は、なんといっても青島国際ビール祭である。
 青島市は中国山東省の港町で、1898年ドイツの租借地となって以来、欧風の街並みが造られた。近年は経済技術開発区として、日本や韓国をはじめ世界各地の企業が進出し、近代化が進んでいる。
 飛行場から青島市内に入った私は、真っ青な海の美しさと、ヨーロッパを思わせるオレンジ色の屋根の洋館を目にして衝撃を受けた。「ここは本当に中国・・・?」。早速「青島ビール博物館」へ行き、「青島ビール」の歴史と生産ラインを見学する。「青島ビール」は1903年、中国初のビール工場として設立されたが、このビール誕生にはドイツの貢献も大きかったようである。一通り見学した後は、お楽しみの試飲である。中国の一般的なレストランでは、あまり中国メーカーの生ビールを見かけないため、この試飲をとりわけ楽しみにしていたのである。ごっくん。「ハァー」。喉を滑りぬけるこの美味しさに、思わず顔がほころんでしまう。本当に美味しい。
樽からビニール袋にビールを注ぐ女性
樽からビニール袋にビールを注ぐ女性

 続いて市内を散策。そして発見。樽から、ビールをビニール袋に注いで購入する青島市民。ビールを袋に入れて買うなんて、びっくり。地元の方は、シャッターを切る私を珍しそうに見ていた。ここではそれが、日常の光景なのだ。
 そして夕方、いよいよビール祭へ。祭はメーン会場の他、数カ所で開催されているのだが、1日目、私たちは海水浴場の目前の会場へ向かった。なるほど、これが中国のビール祭か。とにかく規模が違う。ビールメーカーごとに、巨大なステージと大量の座席、そして屋台が用意されている。各ステージでは、メーカーごとにゲストを招いて、歌や踊り、コントなどそれぞれ大音響で催されているから、音が交差して賑やかで仕方がない。そして、さすがは人口大国。どっちを向いても人人人。それでもなんとか席を見つけ、心地よい潮風に吹かれ中国式イベントを体感しながら、美味しい生ビールを何杯も何杯も飲んだ。青島のビールは、本当に美味しい。
 2日目、まずは海水浴。中国に来て初めてであるが、やはり気持ちがいい。お昼は回転寿司。そう、ここ青島は港町のため、中国では珍しく魚貝類も豊富なのだ。でも、室蘭のお魚たちには敵わないな。市内散策後、待ちに待った夜到来。2日目は祭のメーン会場「青島国際ビール城」へ。遊園地も併設しているこの会場は、前日にも増して混雑している。皆賑やかだ。ビール片手に高々と乾杯する人々、アトラクションに絶叫する人々、各ステージの多彩なイベント、そしてドカーンと大きな花火。様々な音が交差し大盛り上がりな雰囲気は、やはりビールに合う。私たちもこの雰囲気に嬉々としながら、青島最後の生ビールの味を噛みしめた。



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