
室蘭市輪西町の薬店・ハヤシ薬局(林亮店主)が9月、創業1世紀を目前に閉店する。明治・大正・昭和、平成と四つの時代にわたって、住民の健康を支え、地域の盛衰を見続けてきた。室蘭を代表する老舗がまた一つ消える。
「消毒するのあるかい?」「ああ、エタノールね。はいどうぞ」―。輪西3条通りと仲通りがぶつかる交差点の角に店舗がある。なじみ客に笑顔で応じるのは、ハヤシ薬局3代目の林亮さん(77)。喜寿を迎えた今も現役。同期の大半がリタイヤする中、ちょっとした誇りだ。
ただ、周囲から「そろそろ引退しては」と声が掛かっていたという。この夏、里帰りした、東京の大手ビール会社に勤める薬剤師の長男、正樹さん(45)も同じだった。それが効いた。「そろそろ潮時か」。8月末に決断した。
ハヤシ薬局は明治44年、亮さんの父・三善さんが、輪西村の旧市街地(現大沢町瑞の江付近)で開業した。輪西製鉄所(現新日鉄)の工場拡張に伴い現在地へ移転。昭和20年の終戦間際に強制疎開で一時撤退したが戦後再開、亮さんは同35年に姉・澄子さんから稼業を継いで半世紀になる。
「閉店は、そりゃあ残念ですよ」。亮さん、そして妻・伎瑶子さん(72)。正樹に継いでほしい―実は内心考えていた。が、人口減に大手ドラッグストアの進出。環境は様変わりした。「今は早くやめた方が勝ちという世の中だからね」
店内を見回す亮さん。商品棚には空きが目立つ。閉店を決め、割引セールを始めたところ、よく売れている。壁には発泡スチロールを加工した手作り看板。製薬会社のキャラクターとも長い付き合いになった。
「薬はその日の体調はもちろん、顔色を見て勧めます。複数の薬を使う場合もあるし、体質の問題もありますから」。客との問診を何より大切にしてきた。そして、勧めた薬が効いた時に小さな喜びを感じてきた。
白衣を着るのも残りわずか。亮さんは「最後まで責任を持って勤めますよ」とほほ笑む。
(野村英史)
【写真=「最後まで責任を持って勤めますよ」―。林亮さんはきょうも店頭で客を迎える】
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