
市立室蘭図書館ふくろう文庫の蔵書にこのほど、国宝・古筆手鑑(てかがみ)「翰墨城(かんぼくじょう)」(縦38・3センチ、横31・8センチ)の完全複製が加わった。複製は、室蘭船員保険診療所・前所長の東浩さん(77)からの寄付金を活用して購入した。道内での所蔵は初めて。お披露目は10月末を予定している。
国宝三大手鑑の一つとも呼ばれる「翰墨城」は奈良から室町時代にかけて古筆の断簡311葉を表裏一帖にした手鑑。所収する古筆切は経切として大聖切、阿弥切、歌切として高野切、烏丸切、類品稀少の断簡「唐鈔本『王勃集』」など。
もとは古筆了仲(1656〜1736)の所伝で、後に益田鈍翁(1847〜1936)の手に移った。戦後、世界救世教の岡田茂吉教祖が所蔵、現在は同教団が運営するMOA美術館(静岡県熱海市)で管理。1年に1回のペースで一般公開しているという。
同文庫が購入した複製版は昭和54年に中央公論社が限定680部で出版。価格は22万円程度。原寸、原色を生かしてそのまま復元し、別冊に古筆学の大家・小松茂美氏の解説が付いている。同文庫選者の山下敏明さんが古書店などから情報を集めて入手した。
東さんは、45年間勤めた室蘭船員保険診療所所長の勇退を記念して同文庫へ寄付。その寄付金を購入費に充てた。東さんは「浄財が、意にかなった素晴らしい書物に生まれ変わった」と笑顔。山下さんは「市の財産がまた一つ増えました。書道愛好家をはじめ多くの方に見ていただきたい」と喜んでいる。
同手鑑の複製版は10月末、登別市内で開催する「ふくろう文庫 秋の特別展」の中で公開する。
(高橋結香)
【手鑑】
代表的な古人が残した経文や歌書・消息文などの筆跡の一部を切り取り「古筆切」として収集し、鑑賞や書のお手本として台帳に編集してまとめたもの。「翰墨城」のほか「藻塩草」「見ぬ世の友」は国宝三大手鑑といわれる。
【写真=「翰墨城」購入金を寄付した東さん(右)と選者の山下さん(左)】
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